Takashi Unuma's blog.

Open Radar Science

今日では、気象レーダーを扱うオープンソースソフトウェア (OSS) が世界中で開発されるようになっている。特に、Python を用いたソフトウェアが多く、気象レーダーを扱う機関・研究所で独自に開発・進化を遂げている。加えて、レーダーのメーカーによる違いも相まって、フォーマットも異なるというのが現状であった。

上記の現状は、近年になってレーダーを扱うコミュニティ内で共通認識となり、Open Radar Science というプロジェクトが立ち上げられた。詳細はリンク先の説明に譲るが、特筆すべきは分散したオープンソースソフトウェアを統合しよう、という点が議論され、実行に移され始めたことである。一端は 11th European Conference on Radar in Meteorology and Hydrology (通称 ERAD2022) で Short course が行われた。ERAD や American Meteorological Society (AMS) のレーダー専門分科会では、このようなチュートリアルが定期的に有志で行われているようである。

そしてつい最近になって、Xradar というライブラリが誕生した。Xradar は、リンク先の About を読むと分かるように、現在レーダーコミュニティ内で認知されている多くのフォーマットの入出力に対応するとともに、これまでに開発されてきたソフトウェアの橋渡しを担うようなものとして開発が進められている。そして、近未来に標準フォーマットとして採用されうる、CfRadial2/FM301 フォーマットを内部的に扱うようにコーディングされている。ソースコードの公開から執筆時点まで 1 ヶ月弱と日が浅いものの、非常にスピーディに拡張が進められている。恐らく、元々 wradlib に CfRadial1 or 2 の xarray によるバックエンドが既に実装されていたこと、本家Py-ART や Meteo-swiss 版Py-ART で多くのフォーマットに対応した Reader が実装されていたことがそれぞれ拡張性を向上させているものと考えられる。

上記で述べたソフトウェアは、ほとんど Python でコーディングされたものである。WMO JET-OWR Seminar Series on Weather Radar Data Exchange で紹介された資料の中には、オーストラリア気象局の方が開発した C++ による API CfRadial 2.x C++ API and Toolkit もある。現状は、ODIM_H5 フォーマットを CfRadial2 に変換する converter と全般を扱う API が実装されている。先に述べた xradar では幾つかのフォーマットを入力し ODIM_H5 フォーマットとして出力する部分までは実装されているので、これらを組み合わせれば CfRadial1 -> ODIM_H5 -> CfRadial2/FM301 が間接的に実現出来るだろう (未確認)。

今後の動向を注視したい。

— Oct 12, 2022